Frostcove Lineでは、灰釉の調合を年に4回、季節の変わり目に見直しています。同じ配合でも、夏と冬では焼き上がりの色が微妙に変わります。理由は湿度と、粘土の乾燥状態です。釉薬は生き物に近い。同じレシピでも、毎回同じ結果にはなりません。
灰釉の基本:木灰と長石の役割 ¶
灰釉は、木灰(主にケヤキや松の灰)と長石を主成分として調合します。木灰は釉薬を溶かす働きをし、長石はガラス質の素地をつくります。Frostcove Lineでは基本配合を木灰7:長石3としています。この比率を基準に、季節や使う粘土の種類によって1〜2割の範囲で調整します。木灰の割合を増やすと釉薬の流れが強くなり、長石を増やすと発色が安定します。
夏の調合:湿度が高い季節の対応 ¶
夏は空気中の湿度が高く、粘土の乾燥が遅くなります。乾燥が不十分なまま釉薬を掛けると、釉薬が弾かれたり、焼成中にひびが入ることがあります。夏は釉薬の水分量を少し減らし、掛けたあとの乾燥時間を長めにとります。また、木灰の割合をわずかに下げて、釉薬の流れを抑えます。流れすぎると窯棚に釉薬が付いてしまうため、夏は特に注意が必要です。
冬の調合:乾燥が早い季節の対応 ¶
冬は湿度が低く、粘土が急速に乾燥します。乾燥が早すぎると、釉薬を掛けたときに粘土が水分を吸いすぎて、釉薬の層が厚くなりすぎることがあります。冬は釉薬の水分量をやや増やし、掛けるスピードを上げます。長石の割合を少し増やして、釉薬の定着を安定させます。冬の窯は発色が鮮明になる傾向があり、青磁釉の青緑が特によく出ます。
試し焼きタイルで確認する習慣 ¶
調合を変えたときは、必ず試し焼きタイルを本焼きに入れます。10cm角の素焼きタイルに釉薬を掛けて、本番の作品と同じ窯で焼きます。タイルは教室に保管していて、生徒さんが釉薬を選ぶときの参考にしています。「このタイルの色にしたい」という会話から、釉薬の掛け方や厚みの話に発展することが多く、試し焼きタイルは教室の小さな教材にもなっています。
釉薬の調合に正解はありません。季節ごとに少しずつ変えながら、自分の窯と粘土の癖を覚えていく作業です。その積み重ねが、器の顔になります。